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大震災後の家づくり・・・梁下に柱を立てて

とにかく、ご挨拶を済ませS設計士から私にかかってきた昨晩の電話についてお伝えした。
S設計士が図面と現場を確認して言うには、家全体が2階リビングと和室の境を中心に沈み込んでいると思う。
特にリビング吹き抜けの化粧梁に負担がかかっている様子なので柱で梁を下から支えて補強しておかないと、地震時に危険な状態になる・・・
そのほかにも何かあった気がするが、鮮明に覚えているのが柱の補強だった。
杉四寸角を梁の下に入れ、柱と梁を固定した。
「これからさきどうするの・・・」Sさん家族にとって一番の関心はこの言葉に尽きるだろう。
昨日もお伝えしたように図面を下に再度「構造計算」のやり直しを行いその結果を見るしか今のところやれることはない。
「改修で済ませることが可能か、やはり建て替えなければならないか」どちらかハッキリするだろう。
Sさんは、新築3年にもならないのにかかわらず・・・いや、築年数に関係なくこの状態は納得できないのは当然だ。
私が逆の立場なら、同じように思うだろうから。
それは「建て替え」をしてもほしい、この一言だ。
ここまでくれば腹をくくらなければならない・・・と感じていた。
問題は・・・・あまりにも『建物が大きすぎ建築費が莫大なものになること』だった。
建て替えるだけ会社に体力があるか、あったとしても風評問題、それと銀行・税務署がなんというか・・・
まだある、今の間取り外観ではなく新規にプランを作り直すことも必要になるし、建て替え期間中の仮住まいと事務所をどのようにするか、Sさん家族の要望に応えることが出来たとしてもやらなければならないことが山ほどあるのだ。
あらためて、建築業者としての責任とリスクを痛感していた。

大震災後の家づくり・・・突然の電話

その日の仕事の大半は、Sさんの家の問題だったのでさすがに疲れた。
我が家に帰って身体を休めていた、その時電話が鳴った。
それは三時間ほど前に別れたばかりのS設計士からの電話だった。
川越からS設計士が住んでいる相模原までは一時間半から二時間ぐらいはかかる。
帰りは16号国道に沢山ある工場に勤める人たちの帰宅時間にぶつかったかもしれないから
それこそS設計士も家についたばかりに電話してきたようだ。
「榎本さん、どうも気になって仕方がないので電話しました」
「全体構造そのものについては明日から再計算しますが、明日一番に2階リビング吹き抜けにある化粧梁の下に4寸角の柱を取り付けてください」
「場所は梁の長さの真ん中に」
「実は、現場でとても気になって仕方がなかったのが、2階吹き抜けの部分、特に梁です」
「今、大き目の地震が起きればこの部分からつぶれてしまう恐れがあります」
電話口で聞いていた私は・・・・
地震はいつ起きるかわからない万一それで家がつぶれでもしたら、えらいことになる。
しかし、この家一番の見所というかSさんご一家のお気に入りの2階吹き抜け化粧梁に柱を立てる。
それも、真ん中に・・・
電話を切った後、Sさんの家に電話をかけた。
どんな言い方をしたか記憶に残っていないが、とにかく明日一番にリビングの梁下に柱を立てることについては了解を得ることが出来た。
翌日、柱を用意して社員と大工さんと共にSさんのお宅に急行した。
前日の電話で、十分に説明できていないだろうと思いながら昨日に続いて再びSさんのお宅を訪問。
昨日の今日だ、電話で話しはしたといっても納得できているわけはない。
ここは、丁寧にS設計士からの指示とその理由をお伝えする以外方法はなかった。
その場には、問題がおきてからあまりお会いすることのなかった奥さんとお父さんが待っていたのだ。
とにかく、お叱りは覚悟していたとはいえ、私にとってこれ以上ないほど辛い場面だ。
私以上に辛かったのはSさんご家族、それこそ最悪の場面に違いなかった。

大震災後の家づくり・・・第三者検査・現場確認

とにかく、結果はどうであれ診断結果を聞いて判断しようと覚悟は決めた。
いよいよ、当社の現場監督、担当設計士、私とでS設計士を案内して現場に向かった。

現場に向かう前に、工事用の図面と構造計算書、それと問題の症状と様々な対策、その結果を写真などにまとめ、S構造設計士に見せてこれらの原因をたずねてみた。
地盤調査の結果では、丘陵地で土地の地耐力はまったく問題ない。
だから問題は建物そのものである。
平面図を見れば1階が大きな部屋と車庫があり必要な壁量が不足しているし、それに合せて造った基礎も当然不足しているとのこと。
なによりも、間取りに無理がある。
構造計算が正しくされたなら、耐力壁の追加・梁などの変更等、間取りを変える必要がある。
それなのに、この構造計算書では現況の構造で必要条件をクリアしたことになっている。
これは、現場における施工の手抜きや不具合ではなく明らかに「構造計算の偽装」だろうということであった。
これは改めて最初から構造計算を行ってもらうことになっていたので『偽装』していたかどうかははっきりとわかるはず。
(しかし、だからといって構造設計士に責任をかぶせることは出来ないだろうな・・・)
構造強度不足による問題症状だとして、どんな対策が必要になるかということだ。
壁を追加したり、基礎の補強などで済むことなのか、それとも・・・・
Sさんははっきりとは言わないが家族との問題もあり本音は「建替を希望している」のだと思う。

会社から車を走らせること40分、現場に到着。
Sさんが私たちの到着を待っていた。
挨拶をしてS設計士をご紹介し、早速家の内外をつぶさに見てもらう。
S設計士にはすでにここでの対応を報告してあったので、それを確認しながらチェックが始まった。
それ様子を見守るSさんの不安なげな表情は今思い出してもつらい。
床下にもぐり基礎のヒビワレがあるか確認、3階の屋根裏部分もチェック、一番多くの問題症状が発生していた2階をみて一通りの検査が終了した。
(この様子はすべてカメラに収めながらの作業だ)
Sさんには、後日改めてその結果をご報告すると共に「それをふまえてどのようにしたらよいかご相談させてほしい」とお願いし会社へ戻った。
その車内でS設計士は
『榎本さん、なによりも間取りに問題があるね』
それは特に2階に設定したリビングの吹き抜けと2階3階に造ったバルコニーと1階の事務所の東西スパン。

車内で、平面図を見ながら『こんな間取りは基本的にやってはいけない、しかしどうしてもそれが必要というなら、十分な構造の検討と計算によって導かれた対策をしなければならないはずだ』
『しかし構造図面を見る限り普通の住宅と同じで特別に何か対策をした様子はみられない』と改めていわれた。
私も、そのことに問題があると思っていたので「ああ・・・やはりそうか」とうなずくしかない。
とにかく、後はS設計士による構造計算のやり直しを待つと共に、とりあえずいまやっておかなければならないことを指示してもらうことになった。
これらに要する日にちは10日前後ほしいといわれたのだが、それがなんと・・・

大震災後の家づくり・・・欠陥住宅?プロローグ②

家を建てた当初、Sさんご家族からそれこそ感謝され本当に喜ばれもした。
それはそうだろう、家は新しくなり・・・・これはあたりまえだが。
隙間風だらけで古くて使いにくい住宅兼狭い事務所が温かく明るい建物になったわけで、夢に見た理想の家が出来たのだから。
しかし、そんな蜜月も長くは続かなかった。
新築してから二年目ごろだろうか、3階のドアがおかしいので見てほしいという依頼の電話が私宛にかかってきた。
たまたま、時間も空いていたのでメンテナンスの人間と共に早速訪問してみると
階段を上った3階の子ども室のドアが、開けると自動的にしまってしまうのだ。
見た目でドアが少し傾いている気がするが、たいした問題と考えずにドアの兆番の調整をしてとりあえず直すことが出来た。
しかし、それはこれから始まる様々な異変のプロローグでしかなかったのだ。
仕事上のお付き合いもあり、ご家族揃って温和なSさん最初のうちはこのときも「こんなことでお手間を取らせて申し訳ないですね・・・」とこちらがかえって恐縮するほどだった。
しかし、異変は3階部分から2階に移動して様々なところに問題を発生させるようになってくると、さすがに言うこともきつくなる。
当たり前だ、建ててまだ間もない家で不具合がでて、そのたびに様々な業者が出入りをするようになると、今までどおりの生活が出来なくなってくる。
しかも、それだけではない。
昔からその土地で商売を手堅くやってきたSさんの家の異変はなんとなく近所でも話題になっているようだった。
不具合の場所は、あちらこちらにあったためその発生を順番に言うことは出来ないが、最初は3階のドア、そして2階のバルコニーへ出るサッシの開閉がおかしくなり、そのうちに茶の間の建具が、下がり壁がゆがんで出来なくなった。
これらの症状を対処しているそばから今度は、2階リビングに使っているオーク無垢材のゆがみが出てきてしまった。
そこで、一度床をはがし下地合板の水平を計る。
すると合板そのもののゆがみが相当なものになっていてこのままで゛新たに床材を取り付けても治らないことがわかった。
欠陥住宅の検査でよくやる『ゴルフボールを転がす』『レーザーで水平垂直をチェックする』これも当然やってみたが、こんな症状が出る以上、よいわけがない。
当座は何とかしなければと出来ることをすべてやってきたが、きりがなかった。
そしてすでに手直しに使った費用は数百万の単位になっていたと思う。
しかしそれ以上に問題だったのは、きりがなく発生する異変・異常、でSさん家族の心労は極限になっていた。
Sさんからは、何とかしてください、このままでは家ばかりか家族が崩壊してしまう・・・という悲痛な言葉が。
そもそも、この間取りの家で設定した構造計算に問題があるのでは・・・
すでに、計算をしてくれた設計士から話は聞いたが、なんとも頼りない。
以前からお付き合いのあった構造計算の専門家S設計士に図面と構造計算書を見てもらうと同時に、現場にも立ち会ってもらうことになった。
こうした状況が続いたために、私も、「建て替えることも覚悟しなければいけないかも」と覚悟をしていた。
しかし、覚悟は出来ても費用は楽に5000万はかかるだろう。
その費用は今の会社で捻出可能なのか・・・
仮にそれが何とかできたとしても、田舎でのことその風評で『会社が・・・』
こうして私自身もSさんと同じように眠れない日々が続いていた。

大震災後の家づくり・・・欠陥住宅?①

1996年今から15年ほど前に建築した事務所兼用二世帯3階建て住宅で発生した出来事以来、家づくりにたいする考え方が変わった。
当社の欠陥住宅事件はこうしておきた・・・
工事業者さんのSさんから、今の家を壊して事務所兼用住宅を建てたいと言われたことから
始まった家づくり、専任設計士を決め家づくりの打ち合わせを開始。

1階は事務所とビルトインカーポート、父親の寝室とお風呂やトイレ、2階に和室と吹き抜けのあるリビングダイニングと主寝室と水周り、3階に子ども室、あらかたこんな要望だった。
事務所の広さ、車庫で大きなスペースを占め、その上に居住スペースを造るとなると一般的な2階では住居部分の要望は満足できなくなる。
その為、三階部分に二部屋分の洋間と書斎をつくることで、階段と2階のリビングダイニングにも吹き抜けをつくりたいとの要望を満たすことになった。
敷地を目いっぱい使って建てるには、上に伸ばすしか方法がなく建築予定地周辺でははじめての3階建て住居の計画になった。
何度も繰り返し打ち合わせをし完成した図面は、会社設立後最大の工事面積90坪の「2x6工法」となった。

当時も今も木造三階建て住宅の確認申請には「構造計算書」を添付しなければならない。
自社ではこの構造計算書は作れないので構造計算を専門の業者に依頼し、建築確認の許可を取った。
当時、私自身の構造計算書に対するスタンスは「許認可のために必要なもの」という程度の認識でしかなかった。(構造計算を吟味する力も当社にはなかった)
構造計算書を作成した設計士も、今考えるとその程度に考えていたのかもしれない。
許可に必要な要件を造りさえすればよいと、計算書に都合のよいデーターを記入し確認申請を得たのだろう。
「姉歯事件」で有名になった構造計算疑惑もおそらくは同根ではないだろうか。
しかし、それは今になって言える事で、建築に当たってまさかそれが欠陥住宅になってしまうとは想像もしなかった。
構造計算に基づいて構造図を作り現場で施工する、この当たり前のことをしたのだが、1階の広さ、二ヶ所の吹き抜け、そしてバルコニーを各階に作るために下の階よりセットバックしている間取り(重箱みたいなもの)は、無理があったのだ。
(だから、2年もしないで建物の各部に異常が起きてきたわけだが・・・)
それは、許認可をする担当部署も同じで「構造計算書」を見分ける能力がなかったような気がする。
それでも三階建て住宅は役所の工事中の検査もシビアで、構造図と異なる工事は今も昔も出来ない。
だから、二階建てにありがちな現場においての間取りの一部変更もなく工事は完了し、お引渡しをした。
建築地はどちらかというとローカルな場所、周囲には広い敷地に平屋の大きな家や二階建てが多く、三階建てだから珍しかったのと在来木造ではなく、『2x6工法』だったためか、特に注目を集めていた。
あわせて、高断熱・高気密住宅としては当たり前だった高性能断熱材、気密バリアシート、アンダーセンサッシなど当時としては周囲には存在しない先進の家だったのだが。

以下・ウイキペディアより一部引用
(木造二階建て、平屋の住宅は現在、構造計算書は免除されている。
構造計算書とは、許容応力度計算か限界耐力計算に基づく構造安全性の計算を記載した書類のことをいい、柱、梁の一本ごとの計算から、耐力壁の耐震・耐風強度、床剛性、偏心、基礎などの計算を行い、計算書はA4用紙に印刷して200ページを超える膨大なものである。
計算書作成の費用もかかる。
ここで重要なことは、建築物の耐震性能は『構造計算』して初めて量的に確認できるものだということである。
よって、2階建ての木造住宅は構造計算を行わないので、耐震性能の量的な確認はされないことになる。
さらに重要なことは2階建てに適用される法46条の必要耐力壁量は構造計算をする場合の必要耐力壁量の3分の2しかない。
つまり、耐震・耐風基準が低いことになる。
木造3階建て住宅は木造2階建住宅の1.5倍耐震性能が高いといえる。

2階建てでも構造計算をすることが出来るが、その場合には一般に建てられている46条の耐震基準に対して1,5倍の耐震強度が求められる。***)