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試行錯誤の連続・高断熱・高気密

「高断熱」だけで気密を考えない工事や「高気密」だけで断熱を考慮しない住宅造りをするくらいならいっそのこと昔ながらの家を造って住んだほうがよい。続き
私が高断熱高気密に始めて出合ったのは北米シアトルとバンクーバーに行ったときです。一番驚いたのは、家が大きいこともありましたけれど、なによりもたった一台のエアコンで家中がコントロールされていたことでした。
玄関を入るとそこには大きな吹き抜けとおしゃれな階段があるゲストリビングになっていて、こんな大空間をあのエアコンだけでどうして暖めることが可能なのか不思議で仕方なかったのです。
それは、窓も含めて高断熱高気密の家であったから出来たことなのです。
それからしばらくして60坪ほどのモデルハウスを建築した時に、高断熱・高気密を取り入れました。
最初の高断熱。高気密モデルハウス
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早いものであれからすでに13年が経過しました。
その間、あらゆる断熱気密を試みてきたものです。
最初は、厚さ100ミリの高性能グラスウールを壁に使い、アルミ蒸着バリアで気密を確保しました。
大工が壁の中に裸のグラスウールを「押し込む」施工のあり方とともに「気密バリアの取り付け」を見て、問題を感じたのです。
大工は当時、断熱や気密について必要性を理解していなかったのです。
「グラスウールはチクチクするしビニールシートを貼るのは大変だ」そもそもこれは自分たちの仕事では無いと感じていたようです。
たしかに裸の断熱材を壁一面に隙間無く入れることも、ビニールバリアで気密をしっかりと確保するように施工することも、ほぼ不可能でした。
あなたも、これから断熱気密工事をするのであれば大工さんたちにこの断熱気密工事の精度を期待することはおやめになったほうが無難です。
私は北海道に本社のある断熱気密専門業者による高性能断熱材カットしたグラスウールの吹き込み施工を依頼し、その気密検査を実施する事にしました。
検査の結果、気密性能は隙間相当面積1.2cm/㎡となったのですが、その後2つ問題が発生したのです。

一つは
グラスウール断熱の場合、湿気で断熱材がぬれる危険性があることを考慮すればユニットバスは「家の外」と考えないといけないことです。
よりリスクの少ない方法としてユニットバスに接する室内側の壁に断熱工事をしましたが不安はその「浴室・洗面の断熱材が将来どうなるのか」ということです。
それが必ずしも安全だとは今でも言い切れません。
その上、せっかくの高断熱高気密工事をしたにもかかわらずこの断熱気密ラインの選定は裸になる浴室が一番寒い場所になってしまいます。
そこで、その対策として断熱被覆された北海道仕様のユニットバスを取り付けました。
ただ毎回このような特殊な浴室工事が必要では、ユニットバスが選べなくなります。
キッチンや浴室は、家造りをするときにワクワクしながら選ぶものです。
限られた中からしか選べない、それでは困ります。

もう一つは、高断熱高気密には夏場の逆転結露(壁体内結露)の心配がありました。
夏、外部は高温、家の中は冷房、外と内を分ける断熱材の室内側に結露が発生するという問題です。
この住宅では、お客様に協力していただいて2階西側の納戸はバリアシートのみとして検査する事にしました。
あわせて小屋裏も、断熱材の様子を見る事にしたのですが・・・・
本来、エアコン領域とはいえない西側納戸の壁は、外部との温度差は居室ほど激しくないはずなのにバリアシートが水蒸気で曇っていました。
これが結露かどうかは判断できないのですが、この状態を見る限り冷房している部屋の外壁面は結露する可能性がありそうです。
もう一つの小屋裏断熱材は、屋根の勾配なりに吹き込んだ上でバリアシートを施工してあります。
そこは、なんと目にはっきりと見える水滴が発生しバリアシートの中が濡れているのです。
この現実から冬だけを考えた断熱工事では、関東地区は逆転結露が発生するのはまず間違いありません。
早速、改良・補修工事に取り掛かる事にしました。
断熱材を包んでいるバリアシートははがし、小屋裏へ上がるはしごを気密対応はしごに交換した上で2階の天井裏に改めてバリアシートを施工、その上に断熱材を厚く吹き込みました。
高性能グラスウールを使用した断熱気密の方法は「スゥエーデンハウス」「セルコホーム」
など輸入住宅メーカーをはじめとして多数の会社が採用しています。
私が検証した限り、関東地域以西では将来必ず結露が問題になるような気がします。
そのほか試みた断熱工法や素材を挙げれば、内断熱では「セルローズファイバー」。
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この断熱方法を選択したのは、ドイツ系の薬品会社に勤めているお客様で、私も
興味があり工事中も立会い、一部の壁は断熱材が見えるようにしてもらいました。
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「セルローズファイバーは気密工事をしなくて良い」と言う事を書いている著者もいますが、本来断熱と気密はセットで考えるもの。
そして吹きっぱなしでは気のせいか「ホコリっぽい」気がしてなりません。
そのときも、ネットを貼り吹き込んだ後にバリアシートを施工したのです。
バリアシートで見える状態にしておいた壁面上部は沈下によるものでしょう、
隙間が発生していました。
断熱材としては重量が一番重たい材料で、それゆえに防音には高価がありそうです。
ただ、この重さが断熱材の沈下につながり、壁の上部に断熱欠損が発生する可能性がありました。
それと石膏ボードを取り付けるとき結構大変でした。
パンパンに吹き込んでいますから、石膏ボードを押しながら取り付けたためボード面も膨らみ、仕上げ工事が難しくなります。
断熱材は違っても断熱工事はやはり難しい工事なのです。
その後は、この断熱工法は採用していません。
そのほかに試した工法としては「ウレタンの吹きつけ」そしてEPSの断熱材をOSB合板で挟み込んだ「アールコントロールパネル」と同じプレミアパネル工法がありました。
それぞれに価格も含めて考えると長所も欠点もあるため、これが絶対優れているとはいかなく、自分が納得できる断熱方法に行き着かないジレンマに陥りました。
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